【コラム】 上肢機能の回復に関与する脳内メカニズム

コラム:作業療法の根拠となる研究を読む 《第8回:2015年4月12日掲載》

Murata Y, et al. Temporal Plasticity Involved in Recovery from Manual Dexterity Deficit after Motor Cortex Lesion in Macaque Monkeys. The Journal of Neuroscience, 7 January 2015, 35(1): 84-95; doi: 10.1523/JNEUROSCI.1737-14.2015

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コラム執筆者:石井大典氏・近景 今回ご紹介する論文は、以前2014年5月21日に掲載させていただいた作業療法士で産業技術総合研究所 研究員の村田弓さんの論文の続報になります。

 村田さんの研究チームは、以前の研究で第一運動野損傷後の機能回復、特に精密把持の回復は、積極的に麻痺側を使用するリハビリテーションが効果的であると報告しています。そして今回、そのリハビリテーションによる機能回復がどのような脳内メカニズムによって起こっているのかを調べています。

 まず、指の運動を司る脳領域を特異的に損傷させ、リハビリテーションを行うことで上肢の機能を回復させています。そして、リハビリテーションによる機能回復過程での脳活動の変化を調べています。

 その結果、上肢機能の回復直後では運動前野腹側部と呼ばれる部位の活動が高まり、損傷後数カ月経つと損傷領域の周辺部の活動が高まっていたそうです。さらに、各回復過程において活動の高まっていた脳部位(運動前野腹側部と損傷領域周辺部)を一時的に不活性化(働かなくする)すると手の運動障害が再発したそうです。これらの結果より、リハビリテーションによる機能回復は、運動前野腹側部や損傷領域周辺部が代償的に働くことで起こると結論づけられています。

 こういった研究を作業療法士が行っていることに誇りを持つと同時に、我々も情報を得る努力や発信する責任があるように思います。

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