コラム:作業療法の根拠となる研究を読む 《第1回:2014年5月21日掲載》
今回は、作業療法士で産業技術総合研究所 研究員の村田弓さんの論文をご紹介したいと思います。この論文は、リハビリテーションの有効性を科学的に証明した大変貴重なもので、作業療法士の皆様にはぜひ一読していただきたいものです。
村田さんの研究チームは、第一運動野を損傷したサルに上肢のリハビリテーションを行う群と何もしない群を用意しリハビリテーションの有効性を比較しています。具体的には、指の運動を司る脳領域を特異的に損傷させ、1日1時間、週に5日間のリハビリテーションを行うとリハビリテーションを行ったサルは、損傷前と同じレベルまで上肢の機能(特に精密把持)が回復したそうです。
一方で、リハビリテーションを行っていないサルは、一定の回復を示したそうですが、損傷前の動きに比べると拙劣さは残存していたようです。また、その動きを詳細に調べるとリハビリテーションを行っていないサルは、頻繁に代償的な指の使い方をしていたそうです。
これらの結果は、第一運動野損傷後の機能回復には、リハビリテーションによる回復と自然回復とがあり、特に精密把持の回復は、積極的に麻痺側を使用するリハビリテーションが効果的であると示しています。
私は日々の臨床業務の中で「これ(リハビリテーション)って効果あるのかな?」、「意味あるのかな?」と考えてしまうことが度々あります。そのような中、「リハビリテーションは機能回復に効果的だ」というこの論文を見つけ読んだときはとても勇気づけられました。
また、これまでに運動野(皮質)を損傷した患者さんに積極的に麻痺側を使用するリハビリテーションを行ってもらった結果、上肢の機能が改善したという経験もしています。
実際の臨床場面で出会う全ての患者さんにこの結果を直接当てはめることは難しいですが(損傷部位の違いなど)、こういった有益な情報は多数報告されています。そういった情報を少しでも皆様に提供させていただき、役立てていただければと思います。
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