コラム:作業療法の根拠となる研究を読む 《第4回:2014年8月29日掲載》
Satoshi Nori, et al. Grafted human-induced pluripotent stem-cell–derived neurospheres promote motor functional recovery after spinal cord injury in mice. Proc Natl Acad Sci U S A. 2011, 108(40):16825-30. doi: 10.1073/pnas.1108077108.
近年、科学の進歩に伴い医療は大きく発展しています。特に再生医療に注目が集り、これまで治療が困難とされていた疾患の新規治療法の開発に期待が高まっています。
そこで、今回は脊髄損傷後の機能障害に対する人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell: iPS細胞)移植の治療効果を調べた基礎研究をご紹介したいと思います。
現在、脊髄損傷後の機能障害に対する有効な治療法は存在しません。実際、私も脊髄損傷により機能障害を呈した方のリハビリテーションを行った経験がありますが、機能障害に対する十分な治療は提供できませんでした。
そのような中、慶應義塾大学医学部生理学教室所属のSatoshi Noriさんは、脊髄を損傷したマウスへヒト由来iPS細胞を移植し失われた機能を回復させることに成功しました。
その治療効果の背景として、移植した細胞が脊髄内で神経系の細胞へと分化し、シナプス形成と神経伝導を改善させたことが示されています。また、長期的な観察をすることにより、移植した細胞の安全性も確認しています。
これらの結果は、脊髄損傷後の後遺症に苦しむ多くの患者さんの希望となる研究成果です。今後、このような研究が進むにつれリハビリテーションは大きく変化することが予想されます。我々作業療法士は、常に最新の情報に目を向け変化するリハビリテーションへ適切に対応していく必要があります。
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