コラム:精神科作業療法の未来 《第1回:2014年10月6日掲載》
「精神科作業療法の未来」という壮大なテーマで書かせて頂きますが,やはり未来を語るには,過去を振り返り,現在を踏まえていかなければなりません.
ということで,今回は自己紹介も兼ねて私が臨床を始めた頃のお話しからしていきたいと思います.現在は,大学にいますが,作業療法士になって10数年は,精神科病院の作業療法室,デイケア,クリニックのデイケアで勤務していました.働き始めたころは「精神分裂病」から「統合失調症」に変更された年でした.そして,非定型抗精神病薬という名前を良く聞くようになった頃でした.
さらに,「精神保健医療福祉の改革ビジョン」や「改革のグランドデザイン(今後の障害保健福祉施策について)」等が公表され,入院後早期に退院が出来る体制整備をするための精神医療の改革や,退院した精神障害者が地域で安心して暮らせる地域生活支援の強化が図られることになることとなりました.
つまり,入院医療中心から地域生活中心への転換が打ち出され,患者さんのQOLの向上に改めて目を向けられてきた変化の時期を過ごしてきました.また作業療法も助手規定の廃止や1日の算定が3単位から2単位への減少,長期デイケア利用者の回数制限や早期加算など診療報酬も目まぐるしく変化していきました.
今振り返ると,この変化の流れを十分に意識して臨床を行っていなかったなぁと反省しています.もう何年も同じ枠組みで続けられているプログラムも少なくありませんでした・・・・
作業療法は決して病院や施設の中で完結するものではなく,社会の流れの中で位置づけられ,期待されるものなのに,いつのまにか病院や施設の事情など自分を中心とした狭い世界の中だけで考えてしまっていたのです.
自分の職場だけが全てだとは思っていませんか?
作業療法士は常にアンテナを張り続け,臨床に反映させていくかなければなりません.
そんな自分の反省も込めて今、学生さんと一緒に精神科作業療法の実践が,制度や診療報酬の変化に伴いどのように変化していったかを確認するために,OT協会の事例登録集を年毎に分析しています.興味深いことにたくさん気がつき,今後必要となるもののヒントもみつかりました.
でも,それは,また次の回でお話ししたいと思います.
さようならごきげんよう.
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