【コラム】 対人コミュニケーション障害に対する改善効果

コラム:作業療法の根拠となる研究を読む 《第7回:2015年4月12日掲載》

Watanabe T, et al. Mitigation of Sociocommunicational Deficits of Autism Through Oxytocin-Induced Recovery of Medial Prefrontal Activity A Randomized Trial. JAMA Psychiatry. 2014 Feb;71(2):166-75. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2013.3181.

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コラム執筆者:石井大典氏・近景 日々の生活の中で我々は相手の気持ちを表情や態度、言語などの情報から推測し適切と思われる行動を選択しています。自閉症スペクトラム障害の方は、非言語的な情報(表情など)から相手の感情を汲み取ることが難しく対人トラブルを引き起こしやすいと言われています。その背景に内側前頭前野の活動低下が関わっていることが報告されています。

 今回ご紹介する論文ではオキシトシンというホルモンの一種に着目し研究が行われています。これまでに、オキシトシンは好意を寄せている相手からの皮膚接触などで分泌が増加することやオキシトシンの投与で相手への信頼が強まることなどが多数報告されています。そのため“ラブホルモン”と呼ばれることもあります。こういった報告から、オキシトシン投与は自閉症スペクトラム障害の方の治療、特に対人コミュニケーション障害の改善に有効なのでは?と考えられるようになりました。

 そこで、筆者らは自閉症スペクトラム障害の方へオキシトシンと偽薬を投与し、オキシトシンの対人コミュニケーション障害に対する改善効果を調べています。

 その結果、オキシトシンの投与により元々低下していた内側前頭前野の活動が増加し非言語的な情報から相手の気持ちを判断する行動が増えたそうです。

 上述した通り、オキシトシンは外界からの刺激により分泌されると考えられています。その分泌様式にはまだまだ不明な点も多いですが、環境からの刺激を治療として利用する我々作業療法士は、こういった物質の性質を理解し応用していく必要があるのではないでしょうか。

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